日展は、日本美術展覧会の略称で、1907年(明治40年)の第1回文部省美術展覧会(略して文展)からはじまり、帝展、新文展、そして日展と名称を変えながら、100年以上もの歴史をもつ日本を代表する美術展覧会である。
毎年秋になると、洋画家で、高校時代の恩師である根岸右司先生から招待状を届く。その展覧会に足を運び、先生の作品を拝見するのを楽しみにしている。
根岸右司先生は1938年埼玉県生まれ。埼玉大学美術科を卒業後、渡邊武夫先生に師事した。高等学校の美術の教鞭をとりながら、油絵を光風会展、日展に発表し、高い評価を受けてきた。北海道の凍てつく寒さのなか廃坑や原野を描き続けている、雪の画家である。現在、日展評議員、光風会理事。
根岸右司先生の今年の出展作品は「率土」であった。北海道の厳しい寒さのなか広大な真っ白な雪原が広がり、強風が吹き荒み木々がなびく。光輝く雪原にはところどころ褐色の大地がのぞく。雪原の向こうには、力強く突き出した岬と荒々しい海がみえる。凍てつく大地の厳しさと凛とした美しさがそこにはあった。
高校時代に美術室のアトリエを訪ねると、根岸右司先生はいつも鋭い眼光で、キャンバスに対峙し、厳冬の雪の廃坑を描いていた。訪ねてきた私に気づくと、温かい眼に戻り、アトリエに迎え入れてくださた。作品を拝見しているうちに、高校時代にこうしてアトリエで、北海道の冬の廃坑を描くキャンバスのまえで、人生や生き方について話を伺ったことを思い出した。
教え子であろうか、建築家の小田宗治さんによる雪の画家 根岸右司で先生の作品やプロフィールをみることができる。