マーラーの交響曲第3番は演奏時間がおよそ100分にわたる長大な交響曲である。当初は7楽章構成で構想されていたが、第7楽章は交響曲第4番の第4楽章となり、6楽章構成となった。批評家マルシャルクに宛てた手紙で、手紙の中に標題を書いている。
第一部
序奏 「牧神(パン)が目覚める」
第1楽章 「夏が行進してくる(バッカスの行進)」
第二部
第2楽章 「野原の花々が私に語ること」
第3楽章 「森の動物たちが私に語ること」
第4楽章 「夜が私に語ること」
第5楽章 「天使たちが私に語ること」
第6楽章 「愛が私に語ること」
これらの標題は、当時、標題音楽が低俗なものとされる風潮があったため、マーラーは楽譜にこそ記さなかったものの、この交響曲の各楽章のよく表しているといえよう。
第6楽章は「愛が私に語ること」という標題がつけられ、ゆるやかに、安らぎに満ちて、感情を込めて (Langsam. Ruhevoll. Empfunden.)という演奏指示が付されている。アンナ・フォン・ミルデンブルクに宛てた手紙で、この第6楽章について次のように記している。
私はだいたいのところ、この楽章を「愛が私に語ること」と名づけることができると思います。これは、神がただ愛としてのみ把握されうるものなのだという意味からです。このようにして、私の作品は、階段的な上昇で発展していく、あらゆる段階を含む音楽的な詩となっているのです。それは、生命のない自然ではじまり、神の愛まで高められていきます。
この楽章につけられた標題、付された演奏指示、そしてこのマーラーの言葉にすべてがあらわされている。
NMLにあるゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団の録音は、ライブ録音で、叙情的で、情感豊かだ。ピッコロの独奏から金管楽器、弦楽器と主要主題の再現となり、壮大なコーダとなってゆくところは鳥肌がたつ。http://ml.naxos.jp/album/lso0660