患者数が国内で数百人とされ、筋力が徐々に低下する遠位型ミオパチーとよばれる希少・難治性疾患の患者の、遠位型ミオパチー患者会(PADM)が厚生労働省を訪れ、患者会発足以来、全国からの191万筆の署名と全国74の地方議会に採択された意見書と共に「ウルトラ・オーファンドラッグ開発支援の法整備と我が国の創薬・難病対策に関する要望」 を、田村憲久厚生労働大臣に提出されたとのこと。遠位型ミオパチー患者会(PADM)の辻美喜男代表、織田友理子代表代行、林雄二郎事務局長が、江田康幸衆議院議員、山本博司参議院議員、DMRV治療薬の開発者でもある西野一三医師(国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第一部部長)のご同行をいただいて、提出された様子が共同通信により配信され、NHKニュースでも取り上げられた。
希少・難治性疾患の治療薬、いわゆる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)開発は、患者数が少ないために、採算がとりにくく、製薬会社による開発が進まないことが課題となっている。とりわけ患者数が千人未満の希少・難治性疾患の治療薬、いわゆる超希少疾病用医薬品(ウルトラ・オーファンドラッグ)開発は課題となっている。
こうした希少疾病用医薬品開発を促進するため、米国ではいわゆるオーファンドラッグ法が制定され、FDAは対象患者が20万人以下の医薬品をオーファンドラッグとし、税制上の優遇にくわえ7年間の市場独占権を認めている。日本においても厚生省が1985年に「稀用医薬品の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料について」の通知、「特定疾患治療研究事業」および「新薬開発推進事業」を設置して希少疾病用医薬品開発を促進した。希少疾病用医薬品の研究開発促進を目的とした薬事法及び医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の改正が1993年に制定・施行され、この基金の業務拡大に伴い、1994年から医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構、2004年から医薬品医療機器総合機構に改組され、2005年から医薬基盤研究所に移管して、オーファンドラッグ・オーファンデバイス開発支援事業として希少疾病用医薬品開発振興がなされている。
しかしながら、遠位型ミオパチーは難治性疾患克服研究事業・研究奨励分野には指定されたものの、難病指定・特定疾患には指定されておらず、安定した資金投入・継続的な難病研究が阻害されている状況にあり、製薬が実現したとしても多額の患者負担が強いられる状況にある。この状況を打破するために、「ウルトラ・オーファンドラッグ開発支援の法整備と我が国の創薬・難病対策に関する要望」をまとめて、提出されたとのこと。
一、開発間近となったDMRV治療薬について、早期の制度適用、研究者や製薬企業が創薬出来うる統合的な「ウルトラ・オーファンドラッグ開発支援の法整備」に向けた具体的な法律そのものを確立し、これら医薬品の早期承認と患者負担を軽減するための更なる取組を求めます。
一、我が国が発見・治療法を開発したDMRV治療薬について、基礎研究から臨床の間「死の谷」を乗り越える為、国家戦略として更なる医師主導型治験を進める為の公的資金の投入、第II相治験実施予定拠点の「臨床研究中核病院整備事業」への選定、並びに我が国がイニシアティブを取り、最初から参加できる国際共同治験を支援する為の更なる取組を求めます。
一、新たな難治性疾患対策の在り方検討が進む中、難病指定・特定疾患の枠組みに囚われず、有望な研究事業への安定した資金投入・継続的な難病研究の環境と医療費補助の公平性を求めます。
いずれも非常に重要な要望である。それも、これは遠位型ミオパチーのみならず、他の希少・難治性疾患における希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)開発にもつながるものである。要望の最後を、
今後、私たちの要望が叶い、遠位型ミオパチー治療薬実現への第一歩が踏み出せるならば、全世界で有効な治療薬を待ちわびる全ての難病患者の為、希少疾病における創薬のモデルケースとならんことを願っています。
と締めくくられているが、まさに遠位型ミオパチーが、いわゆる希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)開発、それも超希少疾病用医薬品(ウルトラ・オーファンドラッグ)開発のモデルケースとなり、他の希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)開発につながるようにしてゆかなければならない。
遠位型ミオパチー患者会(PADM)の活動を、シンポジウムでのUstream配信をするなど拝見していると、非常に活発で、超希少疾病用医薬品(ウルトラ・オーファンドラッグ)開発のために東北大学での第I相治験を無事終え、薬剤承認に向けてこうしたロビー活動もされるなど、非常に戦略的であり、希少疾病における創薬のモデルケースのひとつとなることを切に願う。